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柔道整復師は多すぎる?過剰供給の実態と今後を元業界人が本音で解説

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「整骨院が増えすぎている」「柔道整復師は飽和状態」——。こういった声が業界の内外から聞こえるようになって久しいです。実際のところ、数字はどうなっているのか。そして、今この業界で働く人たちの収入や待遇に、どんな影響が出ているのか。

この記事では、厚生労働省の公式統計をもとに過剰供給の実態を整理し、今後の柔道整復師がとれる選択肢を具体的にまとめました。

柔道整復師が「多すぎる」と言われる現状|5万施術所・養成校7.8倍増のデータ

就業者数と施術所数の推移

厚生労働省が公表している就業柔道整復師数と施術所数の推移を下の表にまとめました。2012年から2022年の10年間で、就業者数は約3万人増加しています。

年度 就業者数(人) 施術所数(か所)
平成24年(2012) 45,744 40,766
平成26年(2014) 51,988 44,631
平成28年(2016) 58,350 48,394
平成30年(2018) 65,460 50,354
令和2年(2020) 73,522 50,364
令和4年(2022) 75,786 50,139
令和6年(2024)見込み 約76,000 約49,500

出典:厚生労働省「就業柔道整復師数・施術所数 年度別推移」(令和4年衛生行政報告例)

注目すべき点は、施術所数が2018年前後から5万件台で横ばいになっている一方、就業者数はその後も増え続けてきたことです。1施術所あたりに集まる柔道整復師の数が増え、院内での人件費競争が起きている構図が見えてきます。

コンビニに迫る整骨院の過密状況

コンビニエンスストアの店舗数は全国で約5万6,000店(2023年時点)。整骨院・接骨院の施術所数は5万件を超えており、その差はほとんどありません。「コンビニより多い」という表現が業界でよく使われる背景には、この数字があります。

東京・大阪・愛知など人口集中地帯では、同一商店街内に複数の施術所が並ぶケースも珍しくありません。患者数が増えないまま施術所だけが増えれば、1院あたりの来院数が下がるのは当然の帰結です。

柔道整復師が過剰供給になった3つの構造的原因

規制緩和による養成校の急増(1998年14校→2015年109校)

過剰供給の起点は、1990年代後半の規制緩和にさかのぼります。それまで国公立中心だった養成校が、規制緩和によって民間参入が認められた結果、校数が急増しました。

年度 養成施設数(校) 定員数(人)
平成10年(1998) 14 約840
平成17年(2005) 45 約4,500
平成22年(2010) 83 約8,300
平成27年(2015) 109 約10,900
令和2年(2020) 92 約8,400
令和5年(2023) 78 約6,500

出典:厚生労働省「柔道整復師学校・養成施設数、定員 年度別推移」(厚生労働省医政局)

1998年から2015年の17年間で、養成校は14校から109校へ約7.8倍に膨らみました。国家試験合格者も年間6,000〜7,000人規模で排出され続け、就業者数が急増する構造が生まれました。

療養費1000億円減少が招いた収益悪化スパイラル

施術所が増える一方で、柔道整復師の主な収益源である療養費は大幅に減少しています。保険請求の適正化が強化された2010年代以降、療養費総額は2012年度のピーク約4,400億円から2022年度には約3,400億円前後まで落ち込みました。減少幅は約1,000億円に相当します。

1院あたりの保険収入が減り、患者数の取り合いが激化する——この悪循環が現場の年収と待遇を直撃しています。差別化できない院は廃業か売上低迷のどちらかを選ぶしかない状況が続いています。

過剰供給が現場の年収・待遇に与える影響

平均年収443万円の実態|看護師より65万円低い現実

厚生労働省「令和5年 賃金構造基本統計調査」をもとにした柔道整復師の平均年収データと、他の医療系職種との比較を下の表に示します。

職種 平均年収(万円) 対柔道整復師比
看護師 508 +65万円
理学療法士 436 −7万円
柔道整復師 443 基準
作業療法士 421 −22万円
鍼灸師 390 −53万円

出典:各種求人サイト・厚労省賃金構造基本統計調査より(参考値。職種区分によって数値は異なります)

平均年収443万円という数字は、額面だけを見れば極端に低い水準ではありません。しかし勤務先によるばらつきが大きく、中小規模の整骨院では年収350〜390万円台にとどまるケースも多いとされています。また、残業や休日対応が多い割に給与へ反映されにくい構造も問題として残っています。

廃業・転職を選ぶ柔道整復師が増えている理由

全国の施術所数が2018年以降に横ばいまたは微減に転じているのは、廃業が一定数出ていることを示しています。収益が上がらない院が新規参入院に患者を奪われて閉院するサイクルが続いており、その影響は雇用される側にも及んでいます。

勤務先が突然閉院した、院長が変わって給与体系が改悪された——という話は業界内でよく聞きます。勤務先の経営状況が不安定なまま働き続けることのリスクを意識して、早めに動き始める人が増えているのは自然な流れです。

今後の柔道整復師はどうなる?将来性の本音

業界全体の中長期的な見通しについては、柔道整復師の将来性でより詳しく解説しています。ここでは過剰供給と絡めて、現実的な見通しを整理します。

国家試験合格者数が減少傾向に転じた背景

養成校の数は2015年の109校をピークに減少し、2023年時点では78校程度まで縮小しています。定員割れが続く学校が増え、入学者数も落ちてきました。結果として、国家試験合格者数も2015年前後の約6,500人から2023年には約4,500人前後まで減少しています。

就業者数が横ばいに転じ始めているのも、この流れと連動しています。新規参入者が減ることで、過剰供給の圧力は長期的に緩和される可能性があります。ただし現時点での施術所密度はすでに高い水準にあるため、短期的な需給バランスの改善は見込みにくい状況です。

高齢化需要・スポーツ分野で生き残れる可能性

高齢化の進展は、筋骨格系の医療・リハビリへの需要を押し上げます。変形性膝関節症や腰痛の保存療法として、整骨院が担う役割は引き続きあります。スポーツトレーナーやアスレティックトレーナーとしての活躍の場も広がっており、資格を活かせるフィールドは整骨院だけではありません。

過剰競争の中でも、「専門特化」「自費移行」「資格追加」のいずれかの軸で差別化できた院や個人は、一定の収益を維持できています。業界全体の数字が厳しくても、立ち位置次第で状況は変わります。

過剰供給の時代を生き残る3つの選択肢

選択肢1:転職で活躍の場を広げる

柔道整復師の資格は整骨院以外でも活かせます。スポーツジム・フィットネスクラブでのトレーナー職、介護施設での機能訓練指導員、医療機器メーカーの営業職など、整骨院以外の転職先は複数あります。保険診療への依存度が低い職場では、療養費の減少に左右されにくい収入基盤を作ることができます。

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選択肢2:自費メニューで保険依存から脱却する

療養費が減少傾向にある中で、保険診療だけに頼る経営は収益の安定性が低下しています。ドライヘッドスパ・整体・パーソナルトレーニング・栄養指導といった自費メニューを加えることで、客単価と来院頻度を同時に高めることが可能です。

自費移行に成功した院では、保険比率を30〜40%まで下げながら売上を維持しているケースもあります。すでに患者との信頼関係がある状態での移行は、一から集客するよりも成功率が高くなります。

選択肢3:追加資格で専門性を高める

鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師の資格を追加することで、提供できる施術の幅が広がります。NSCA-CPTやJATI-ATI(日本トレーニング指導者協会)などのトレーナー資格を取得すれば、スポーツ分野でのポジションを確立できます。

資格追加はコストと時間を要しますが、就職・転職・独立のどのシナリオでも選択肢を広げる効果があります。複合的なスキルを持つ柔道整復師は、同じ業界内でも市場価値の水準が変わってきます。

よくある質問

これから柔道整復師を目指してもいいですか?

国家資格としての価値はなくなりません。ただし、整骨院での保険診療だけを前提とした働き方では、年収の上限が見えやすくなっています。スポーツ・介護・医療機器・美容など、資格を活かせるフィールドを広く想定したうえで目指すのであれば、現時点でも選択肢として成立します。

過剰供給の中でも食べていけますか?

食べていけるかどうかは、働く環境と本人の動き方次第です。繁盛している院で学びながらスキルを磨き、自費や専門分野へのシフトを早めに意識できる人は、業界の厳しさの中でも一定の収入を確保できています。整骨院業界全体が厳しいのは事実ですが、個人レベルでは動き方で変えられる部分が大きいです。

転職を考えた方がいい時期の目安は?

勤続5年目以降で年収が横ばい、かつキャリアアップの話が一切出てこない状況が続くなら、一度市場価値を確認する機会として転職活動をスタートする価値があります。転職活動は始めたからといって必ず転職しなければならないわけではなく、現状を客観的に把握するために動くことも有効です。

まとめ|今から動けば選択肢はある

柔道整復師の過剰供給は、統計上明確な事実です。就業者75,786人・施術所5万件超・養成校7.8倍増——これらの数字が積み重なって現在の状況が生まれています。

しかし、業界全体の課題と個人のキャリアは別の話です。転職で新しい活躍の場を見つけた人、自費移行で収益を安定させた院、追加資格でポジションを確立した人——それぞれが業界の厳しさの中で道を切り開いています。

まずは自分の現状と市場価値を把握することから始めてみてください。

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この記事を書いた人
高橋 大輝
柔道整復師として整骨院で8年間勤務し、院長代理として現場管理も経験。自身の転職活動で複数のエージェントを使い比較した経験をもとに、治療家の転職・キャリアに関する情報を発信しています。資格取得から独立まで、現場目線でお届けします。

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