この記事でわかること
- 整骨院で働く柔道整復師の年収データ(年代・施設規模別)
- 整骨院の年収が低い3つの構造的な理由
- 年収を上げるための具体的な打開策3つ
- 年収アップに成功した柔整師のリアルな事例
整骨院で働く柔道整復師の年収が低いのは、個人の努力不足ではありません。業界の構造そのものに原因があるからです。
「頑張れば給料は上がる」「経験を積めば報われる」——残念ながら、この業界ではそう単純にはいきません。現場で10年近く施術を続けても年収350万円台のまま、という柔整師は珍しくないのが実態です。
なぜ低いのかを正しく理解し、構造の外にある選択肢を知ることが、年収を上げるための第一歩です。
この記事では、整骨院の年収が低い本当の理由を業界構造から解き明かし、具体的な3つの打開策を提示します。
整骨院で働く柔道整復師の年収データ
まず、現実の数字を確認しましょう。
全体の平均年収
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 平均年収 | 約378万円 |
| 平均月給 | 約26万円(額面) |
| 手取り月給 | 約20〜22万円 |
| 中央値 | 約350万円 |
| 日本の給与所得者平均 | 約460万円 |
日本の平均年収と比べると、約80万円の差があります。「国家資格を持つ専門職なのに、なぜここまで低いのか」と感じるのは当然のことです。
注意が必要なのは、この数字が正規雇用・フルタイム勤務の平均値だという点です。パートや非常勤を含めると実態はさらに低くなります。また、額面26万円から社会保険料・所得税・住民税を差し引くと手取りは約20〜22万円。「月給26万円もらっている」という感覚より、実際の生活は苦しくなることがほとんどです。
年代別の年収
| 年代 | 平均年収 | 手取り月給の目安 |
|---|---|---|
| 20代前半 | 280〜320万円 | 18〜20万円 |
| 20代後半 | 320〜370万円 | 20〜22万円 |
| 30代 | 350〜420万円 | 22〜26万円 |
| 40代以上 | 400〜500万円 | 25〜32万円 |
20代の間はとくに厳しく、手取り20万円を切るケースも珍しくありません。背景には、多くの整骨院で「固定給+歩合」の給与体系をとっているにもかかわらず、患者数のノルマが高くインセンティブが実質機能しにくい実態があります。
30代以降で分院長や管理職に就ければ多少上がりますが、整骨院業界でキャリアアップできるポストは「分院長」しかない院も多く、そのポストを競い合う構造になっています。勤務柔整師のまま年収500万円を超えるのは少数派です。
施設規模別の年収
| 施設タイプ | 年収の目安 | 昇給の仕組み |
|---|---|---|
| 個人院(スタッフ1〜3人) | 280〜380万円 | ほぼなし。院長の裁量次第 |
| 中規模院(5〜10人) | 330〜420万円 | 評価制度がある場合も |
| グループ院(複数院展開) | 350〜520万円 | 昇格・分院長制度あり |
| 整形外科 | 350〜500万円 | 病院の給与体系に準拠 |
個人院で昇給が難しい本質的な理由は、院長自身の取り分を削らなければスタッフの給与を上げられないという構造にあります。保険収入が頭打ちになる中で、スタッフの給料を上げることは院長の生活を圧迫することに直結します。「上げてあげたくても上げられない」という状況が生まれているのです。
整骨院の年収が低い3つの構造的な理由
整骨院の年収が低いのは、あなたのスキルや努力の問題ではありません。業界構造そのものに原因があります。
理由1:保険施術の単価が低すぎる
整骨院の収入の柱は、健康保険を使った施術です。しかし、保険施術の1回あたりの単価は500円〜2,000円程度。
1日に20人を施術しても、1日の売上は1万円〜4万円。ここから家賃・光熱費・材料費・人件費を差し引くと、スタッフの給料に回せる金額は限られます。
保険施術だけで高い給料を払える整骨院は、構造的にほぼ存在しないのです。
さらに、不正請求の取り締まりが強化されたことで、かつてのように「水増し請求で利益を出す」手法は使えなくなりました。正しく運営すればするほど、保険だけでは経営が苦しくなるという矛盾があります。
加えて、保険点数の改定が勤務柔整師の給与改善に直結するかどうかは、院の経営方針次第というのが現実です。2026年7月の療養費改定が給与にどう影響するかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 2026年7月療養費改定で勤務柔整師の給料はどう変わる?院長が言わない仕組みを解説
理由2:競合が多すぎる
柔道整復師の施術所は全国で約50,000軒以上。この数は大手コンビニチェーンの店舗数に匹敵します。
患者の数に対して施術所が多すぎるため、1院あたりの患者数が減少しています。特に都市部では駅前に3〜4軒の整骨院が並んでいることも珍しくありません。
患者の奪い合いが起きている市場で、スタッフの給料を上げる余裕がないというのが現実です。
競合が多い環境が引き起こすのは「悪い競争」です。患者を呼び込むために施術時間を無制限に延ばしたり、他院より早い時間から営業したりする動きが起き、スタッフの労働時間だけが増えて給与は変わらないという状況を招きます。毎年数千人が新たに国家試験に合格して参入してくる業界の構造上、この状況はすぐには変わりません。
柔道整復師の過剰供給問題については、こちらの記事で業界の実態を詳しく解説しています。
→ 柔道整復師は多すぎる?過剰供給の実態と今後を元業界人が本音で解説
理由3:給与を上げる仕組みがない
これが最も根深い問題です。大企業であれば「年次昇給」「賞与」「昇格制度」がありますが、個人経営の整骨院にそんな仕組みはないのが普通です。
多くの整骨院では、「頑張り」を数値で評価する基準がありません。施術数・患者満足度・再来院率といった指標を管理していない院では、給与が院長の主観や気分で決まります。同じスキルと実績があっても、どの院で働くかによって年収に大きな差が生まれるのはそのためです。
院長の感覚で「頑張ってるから来月から1万円上げるよ」という程度。逆に、業績が下がれば何の説明もなくボーナスがカットされることもあります。
評価制度がないから頑張りが報われません。報われないからモチベーションが下がります。モチベーションが下がるから成果が出ません——この負のループが、整骨院の低年収を固定化しています。
年収を上げるための3つの打開策
構造的な問題を理解した上で、年収を上げるための具体的な打開策を3つ紹介します。
打開策1:昇給制度のあるグループ院に転職する
最もシンプルで即効性のある方法です。
個人院から複数院を展開しているグループ院に移るだけで、年収が50万〜100万円上がるケースは珍しくありません。
| 比較項目 | 個人院 | グループ院 |
|---|---|---|
| 初任給 | 20〜23万円 | 23〜27万円 |
| 昇給制度 | なし〜院長裁量 | 評価制度あり |
| キャリアパス | 院長のみ | 副院長→分院長→エリアマネージャー |
| 賞与 | 0〜1ヶ月分 | 1〜3ヶ月分 |
| 社会保険 | 未完備も多い | 完備が多い |
グループ院では分院長になれば年収450万〜520万円、エリアマネージャーでは550万円以上も視野に入ります。
転職先を選ぶ際は、求人票の給与だけでなく「直近1年で分院長に昇格した実績があるか」「現在の分院長の平均年齢」を面接時に確認してみてください。昇格ルートが実際に機能しているかどうかを判断する材料になります。
打開策2:自費メニューのスキルを身につける
保険施術の単価限界を打破するには、自費メニューの導入が不可欠です。
自費メニューを提供できるスタッフは院の売上に直結するため、給料交渉の強力な武器になります。
| 自費メニュー | 単価目安 | 需要が高い理由 |
|---|---|---|
| 骨盤矯正 | 4,000〜8,000円 | 産後ケア需要の拡大 |
| 猫背矯正 | 3,000〜6,000円 | デスクワーク層の増加 |
| EMSトレーニング | 3,000〜5,000円 | 施術+トレーニングの複合需要 |
| 美容整体 | 5,000〜10,000円 | 若年層の美容意識向上 |
| パーソナルストレッチ | 3,000〜6,000円 | スポーツ愛好家の増加 |
「自費で月100万円売り上げられる」スタッフは、どの院でも引っ張りだこです。給料交渉で「自費メニューの売上実績」を提示できれば、月給3万〜5万円のアップは十分に可能です。
スキルの習得方法としては、骨盤矯正・姿勢矯正などを扱う協会認定セミナーへの参加が一般的です。費用は数万円〜20万円程度かかりますが、給与アップにつながれば1年以内に回収できる投資になります。交渉の場では感情論よりも「月○万円の自費売上を立てている」という数字を示すことが最も有効です。
打開策3:整骨院以外のフィールドに移る
柔道整復師の資格は整骨院だけのものではありません。働く場所を変えるだけで年収が大きく変わることがあります。
| 転職先 | 年収目安 | メリット |
|---|---|---|
| 整形外科 | 350〜500万円 | 社保完備・安定した勤務体系 |
| デイサービス | 300〜400万円 | 残業なし・土日休み |
| スポーツジム・トレーナー | 300〜500万円 | 好きなことを仕事にできる |
| 医療機器メーカー営業 | 400〜700万円 | 年収アップ率が高い |
| 訪問施術 | 350〜550万円 | 自分のペースで働ける |
特に医療機器メーカーの営業職は、柔整師としての現場経験が直接活かせる上に年収も大幅アップが期待できる穴場のキャリアです。整骨院が主な販売先となるため、「自分もあの施術者の立場だった」という経験が院長との信頼関係構築に大きく働きます。転職ルートは医療系転職エージェントを経由した中途採用が主流です。
年収アップに成功した人の事例
実際に年収を上げた柔整師の事例を3つ紹介します。
事例1:個人院→グループ院に転職(29歳・男性)
「個人院で5年間、年収320万円。転職サイト経由でグループ院に移ったら初年度から年収400万に。2年後に副院長になって450万。同じ施術をしてるのに、働く場所でこんなに変わるとは思わなかった。」
スキルは変わっていないのに、年収が80万円上がっています。「どこで働くか」が年収を決める最大の要素であることを示す好例です。環境を変えることへの心理的なハードルが高い方も多いですが、動くことで現実が変わる可能性は十分にあります。
事例2:自費メニュー導入で給料交渉(32歳・女性)
「骨盤矯正の技術を独学で磨いて、院に自費メニューとして提案。月の自費売上が50万円を超えたタイミングで給料交渉したら、月給が4万円アップしました。数字で結果を示すのが一番強い。」
このケースのポイントは「転職せずに交渉した」点です。院を変えずに年収を上げたい場合、自費売上の実績を作ることが最も現実的な方法です。感情論ではなく数字を根拠に交渉できれば、院長も断りにくくなります。
事例3:整骨院→医療機器メーカー営業(35歳・男性)
「12年間施術をしてきましたが、体力的な限界を感じて転職。医療機器メーカーの営業職に移ったら、1年目で年収480万。施術の経験がクライアント(整骨院の先生方)との信頼構築に直結しています。」
35歳での異業種転職でも、医療機器営業においては現場経験が強みになります。「先生の立場」を知っている営業担当者は、院長側から見ると話しやすく信頼されやすいためです。施術経験を「弱み」ではなく「差別化要素」として活かせる数少ない転職先のひとつです。
よくある質問
まとめ:年収が低い原因を知れば、打ち手が見える
この記事のポイント
- 整骨院の年収が低いのは「保険単価の限界」「競合過多」「昇給制度の不在」が原因
- 個人の努力不足ではなく、業界構造の問題。頑張るだけでは解決しない
- 打開策は3つ:①グループ院への転職 ②自費メニューのスキル習得 ③整骨院以外への転身
- 同じスキルでも「働く場所」を変えるだけで年収50万〜100万円変わる
- 在職中に転職サイトで情報収集するのが第一歩
整骨院の年収が低い構造を理解した上で、自分に合った打開策を選び、行動に移すことが現状を変える道です。「今の環境が当たり前」と思わず、まずは外の選択肢を調べることから始めてみてください。


